PDFの規格一覧|PDF/A・PDF/X・PDF/UAなど用途別の違いをやさしく解説
PDFには長期保存用のPDF/A、印刷入稿用のPDF/X、アクセシビリティ用のPDF/UAなど、目的別の「規格(サブセット)」があります。各規格のISO番号・用途・違いを早見表で整理し、目的別の選び方をやさしく解説します。

ひとくちに「PDF」と言っても、実は用途別にいくつもの規格(サブセット)が存在します。長期保存に向いたもの、印刷所への入稿に向いたもの、誰もが読めるようにアクセシビリティに配慮したもの――。それぞれ目的に合わせて最適化されており、「PDF/A」「PDF/X」「PDF/UA」といった名前を見聞きしたことがある方も多いでしょう。この記事は、そうしたPDFの規格全体を見渡す地図として、各規格のISO番号・用途・違いを早見表で整理し、目的別の選び方をやさしくまとめます。なお、そもそもPDFがどんな仕組みのファイルなのかは、PDFの仕組みを解説した記事もあわせてご覧ください。

PDFの仕組みをやさしく解説|なぜどの端末でも同じ見た目になるのか
PDFとは何か、どんな仕組みでどの端末・環境でも同じ見た目になるのかを、フォント埋め込みや内部構造、ISO規格、検索可能PDFの考え方までやさしく解説します。一次情報の出典付きで正確に理解できます。
そもそもPDFの「規格」とは?
すべてのPDFの土台になっているのが、国際標準化機構(ISO)が定めるISO 32000という仕様です。広く使われてきた PDF 1.7 は ISO 32000-1:2008、より新しい PDF 2.0 は ISO 32000-2として標準化されています(出典: PDF Association(ISO 32000-2))。
では「PDF/A」や「PDF/X」といった派生規格は何かというと、これらはISO 32000 の“適合サブセット(subset)”です。土台となる仕様の中から、用途にとって必要な機能を必須にしたり、トラブルのもとになる機能を禁止したりして、特定の目的に最適化したものだと考えると分かりやすいでしょう。たとえば長期保存向けの規格では「フォントを必ず埋め込む」「外部リンクに依存しない」といったルールが課されます。
メモ
イメージは「共通の土台+用途別のルールセット」。土台(ISO 32000)は同じで、その上に「保存用」「印刷用」「アクセシビリティ用」などのルールを乗せたものが各規格です。だからどの規格のPDFも、普段使っているビューアで普通に開けます。
主要な派生規格の総覧は、PDFの標準化に関わる業界団体 PDF Association がまとめています(出典: PDF Association「PDF Standards」)。次の章で、その全体像を早見表で見ていきましょう。
PDF規格 早見表(規格マップ)
代表的なPDF規格を、ISO番号と一言の用途でまとめました。「名前は聞くけど何向けか分からない」を解消する地図として使ってください。
規格 | 規格番号 | 主な用途 |
|---|---|---|
PDF(基本) | ISO 32000 | すべての規格の土台。一般的なPDF(PDF 1.7/PDF 2.0) |
PDF/A | ISO 19005 | 長期保存・アーカイブ(将来も同じ見た目で開ける) |
PDF/X | ISO 15930 | 印刷・入稿(印刷所で意図どおりに刷れる) |
PDF/UA | ISO 14289 | アクセシビリティ(スクリーンリーダーなど支援技術への対応) |
PDF/E | ISO 24517 | 技術・エンジニアリング(CAD・設計図面など) |
PDF/VT | ISO 16612 | バリアブル印刷(宛名などを差し替える可変データ印刷) |
PAdES | ETSI EN 319 142 | 電子署名(PDFへの長期的な電子署名。欧州の規格) |
メモ
PAdES だけは ISO ではなく欧州規格(ETSI EN 319 142)です。PDF/A・PDF/X などが ISO で定められているのに対し、電子署名の PAdES は欧州電気通信標準化機構(ETSI)が策定しています。各規格の総覧は PDF Association のページにまとまっています(出典: PDF Association)。
手元のPDFがどの規格か確認するには?
規格の種類が分かると、次に気になるのは「では、いま手元にあるこのPDFはどの規格なのか」でしょう。これは Adobe Acrobat / Acrobat Reader で開くと確認できます。
とくに分かりやすいのが PDF/Aです。PDF/Aに準拠したファイルを開くと、画面上部に「このファイルは PDF/A 規格に準拠しています」という趣旨の青い通知バー(ドキュメントメッセージバー)が表示されます。このとき文書は誤って編集してしまわないよう「読み取りモード」で開かれます(出典: Adobe(PDFの表示と表示環境設定))。
より確実に確認したいときや、PDF/Xなど青いバーが出ない規格の場合は、文書のプロパティから適合規格を調べます。Acrobat ではナビゲーションパネルの「標準(Standards)」パネルを開くと、その文書がどの規格(PDF/A・PDF/X・PDF/UA・PDF/E など)に準拠しているか、ISO名とあわせて確認できます(出典: Adobe(PDF/X・PDF/A・PDF/E 準拠ファイル))。
メモ
青いバーが出ない=規格に準拠していない、とは限りません。あの通知バーは主にPDF/Aで表示されるもので、PDF/XやPDF/UAなどでは出ないことがあります。バーが見当たらないときは、上記の「標準」パネル(文書のプロパティ)で適合規格を確認してください。
目的別の選び方(どの規格を使えばいい?)
「やりたいこと」から逆引きすると、選ぶべき規格が見えてきます。代表的なケースを並べました。
何年経っても同じ見た目で開けるよう保存したい → PDF/A。契約書・公文書・論文など、長期保存が前提の文書に向いています。詳しくは PDF/Aの詳細記事へ。
印刷所へ入稿してきれいに印刷したい → PDF/X。チラシ・冊子・名刺など、商業印刷の入稿データに向いています。詳しくは PDF/Xの詳細記事へ。
視覚障害のある人を含め、誰でも読めるようにしたい → PDF/UA。スクリーンリーダーなどの支援技術が正しく読み上げられるよう、構造(タグ)を備えたPDFです。公共機関の文書や、アクセシビリティが求められる場面に向いています。
PDFに電子署名を付けて真正性を担保したい → PAdES。署名が長期にわたって検証できる形式で、欧州を中心に電子契約などで使われます。
CAD・設計図面など技術文書を扱いたい → PDF/E。エンジニアリング分野の図面・技術ドキュメント向けの規格です。
宛名などを差し替えて大量印刷したい → PDF/VT。ダイレクトメールのように一部だけ可変にする「バリアブル印刷」向けの規格です。
ポイント
迷ったら、まずは「特別な規格を指定されているか」を確認しましょう。提出先や印刷所から「PDF/Aで」「PDF/X-1aで」などと指定がある場合は、その規格に合わせます。指定がなく、ふだんの共有・閲覧が目的なら、一般的なPDF(ISO 32000)のままで問題ありません。
特定の規格のPDFは、専用ソフトをわざわざ用意しなくても作れることが多いものです。たとえば WordやIllustrator・InDesignの「保存(書き出し)時のオプション」で、出力する形式として規格を選ぶだけで生成できます。具体的な作り方は、PDF/Aの作り方・PDF/Xの作り方の各記事で解説しています。
「規格は排他的ではない」――1つのPDFが複数規格を満たせる
ここで誤解しやすいのが、「PDF/A か PDF/UA か、どちらか一方を選ばないといけない」という思い込みです。実際には、PDFの各規格は互いに排他的ではありません。条件を満たすように作れば、1つのPDFが複数の規格に同時に適合できます。
たとえば、長期保存に適した PDF/A の要件と、アクセシビリティに配慮した PDF/UA の要件を両方とも満たすPDFを作ることができます。「保存にも強く、誰でも読める」一石二鳥のPDF、というわけです。この点は PDF Association も明確に説明しています(出典: PDF Association「PDF standards are not mutually exclusive」)。
メモ
「どの規格にも当てはまらない普通のPDF」も立派なPDFです。派生規格はあくまで特定用途のための上乗せルールであり、必ずどれかを名乗らなければならないわけではありません。日常的に共有・閲覧するPDFの多くは、土台のISO 32000に沿った一般的なPDFです。
特に問い合わせの多い2つ:PDF/A(保存)とPDF/X(印刷)
数ある規格のなかでも、実務で出会いやすく質問が集まりやすいのが PDF/A(長期保存) と PDF/X(印刷入稿) の2つです。それぞれ適合レベル(PDF/A-1b、PDF/X-1a など)や、満たすべき具体的な条件が決まっています。この記事では地図に徹し、詳しい中身は子記事に譲ります。
PDF/A:長期保存・アーカイブ向け(ISO 19005)
フォントの埋め込みなどを必須にし、外部環境に依存せず将来も同じ見た目で再現できることを目指す規格です(出典: PDF Association(ISO 19005 / PDF/A))。適合レベルの違いなど、詳しくは次の記事にまとめています。

PDF/Aとは?長期保存用のPDF規格をやさしく解説(作り方・確認方法も)
PDF/A(ISO 19005)は長期保存・アーカイブ向けのPDF規格。フォント埋め込み必須・暗号化禁止などのルールと、適合レベル(A-1/A-2/A-3/A-4)の違い、電子帳簿保存法との関係、無料での作り方・本当にPDF/Aか確認する方法まで、やさしく正確に解説します。
PDF/X:印刷・入稿向け(ISO 15930)
色やフォント、トラブルのもとになる要素を制御し、印刷所で意図どおりに刷れることを目指す規格です(出典: PDF Association(ISO 15930 / PDF/X))。PDF/X-1a や PDF/X-4 といった種類の違いは、こちらで解説しています。

PDF/Xとは?印刷入稿で指定される規格と作り方(X-1a/X-4の選び方)
印刷所から「PDF/X-1aで入稿して」と言われた方向けに、PDF/X(ISO 15930)の意味と、X-1a・X-3・X-4の違い、選び方、印刷事故を防ぐ仕組み、作り方(InDesign/Illustrator/Acrobatの役割)をやさしく解説します。
規格と日常ツールの関係(普段のPDFはどう作る・整える?)
特別な規格指定がない日常の作業では、土台となる一般的なPDF(ISO 32000)を扱う場面がほとんどです。Origami PDF のツールも、こうした標準的なPDFの「作る・軽くする・整える」を、無料・インストール不要・ブラウザ内で完結(ファイルは送信されません)の形でカバーしています。
標準的なPDFを作りたい → PDF作成。画像などから一般的なPDFを手早く作れます。
ファイルサイズを軽くしたい → PDF圧縮。メール添付やアップロードがしやすいサイズに整えられます。
タイトルや作成者などのプロパティを整えたい → メタデータ編集。文書プロパティ(タイトル・作成者など)を書き換えられます。
メモ
メタデータ(文書プロパティ)は、どの規格でも“身分証”のような役割を持ちます。タイトルや作成者といった情報は規格をまたいで使われる基本要素です。プロパティの確認・編集・削除の考え方は、PDFのメタデータ解説記事で詳しく扱っています。

PDFのメタデータとは?確認・編集・削除のやり方をまとめて解説
PDFのメタデータ(文書プロパティ)の意味と、タイトル・作成者などを確認・編集・削除する方法を解説。ファイル名を変えてもタイトルが直らない理由や、無料・ブラウザ完結で安全に扱うコツも紹介します。

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まとめ
PDFには、共通の土台である ISO 32000 の上に、用途別の規格(適合サブセット)があります。長期保存ならPDF/A、印刷入稿ならPDF/X、アクセシビリティならPDF/UA、電子署名ならPAdES――というように、目的から逆引きして選ぶのがコツです。
各規格は「土台+用途別のルール」。どの規格のPDFも、ふだんのビューアで普通に開けます。
規格は排他的ではなく、1つのPDFがPDF/AとPDF/UAのように複数規格を同時に満たすこともできます。
特別な指定がなければ、一般的なPDF(ISO 32000)のままで十分。指定があればその規格に合わせます。
より深く知りたい規格があれば、PDF/Aの詳細・PDF/Xの詳細の記事へどうぞ。普段のPDF作業なら、PDF作成・PDF圧縮・メタデータ編集が、無料・インストール不要・ブラウザ内で完結(ファイルは送信されません)で使えます。目的に合わせて使い分けてください。

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