Origami PDF
(更新: 2026年6月24日

PDF/Aとは?長期保存用のPDF規格をやさしく解説(作り方・確認方法も)

PDF/A(ISO 19005)は長期保存・アーカイブ向けのPDF規格。フォント埋め込み必須・暗号化禁止などのルールと、適合レベル(A-1/A-2/A-3/A-4)の違い、電子帳簿保存法との関係、無料での作り方・本当にPDF/Aか確認する方法まで、やさしく正確に解説します。

「この書類はPDF/Aで保存してください」「論文はPDF/A形式でリポジトリに登録を」――そう言われて、PDF/Aって普通のPDFと何が違うの?と戸惑った方は多いはずです。結論から言うと、PDF/Aは長期保存・アーカイブのために作られたPDFの国際規格です。何年・何十年後に開いても同じ見た目を保てるよう、ルールを厳しくしたPDFだと考えてください。この記事では、PDF/Aとは何か、どう作る・変換するか、そして本当にPDF/Aになっているかを確認する方法までを、やさしく正確に整理します。PDFの規格全体の地図はPDFの規格まとめ、そもそもPDFがどんな仕組みのファイルかはPDFの構造の解説もあわせてご覧ください。

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PDF/Aとは(ISO 19005で定められた長期保存用のPDF)

PDF/Aは、文書を長期にわたって保存・閲覧できるようにするためのPDFの国際規格で、ISO(国際標準化機構)が ISO 19005として標準化しています(末尾の「A」は Archive=アーカイブの頭文字です)。ふつうのPDFと見た目はほとんど同じですが、「将来も同じように開けること」を最優先にしたルールが課されている点が違います。

その核になる考え方が「自己完結(self-contained)」です。文書を正しく表示するのに必要な要素を、すべてファイルの中に閉じ込めておく――外部の何かに頼らない――という原則です。具体的には、おおむね次のようなルールがあります。

  • フォントの埋め込みが必須: 使っている書体をファイルに同梱します。閲覧する端末にそのフォントが入っていなくても、文字化けせず同じ見た目で開けます。

  • 暗号化(パスワード保護)は禁止: 将来、復号の手段が失われて開けなくなることを避けるため、暗号化はかけられません。

  • 外部参照は禁止: 別ファイルや外部のリソースを参照しません。表示に必要なものはすべて自分の中に持ちます。

  • 音声・動画・JavaScriptなどは制限: 再生環境に依存する要素や、動作が将来変わりうる仕組みは使えません。

こうした制約があるからこそ、PDF/Aは10年後・20年後にソフトや環境が変わっても、同じ見た目で開けることが期待できます。契約書・申請書・論文・行政文書など「長く確実に残したい文書」に向く理由はここにあります。規格としての位置づけや背景は、PDFの標準化を担う団体である PDF Association の PDF/A(ISO 19005)解説ページが一次情報として参考になります。

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メモ

「PDF/A」は普通のPDFの上位互換ではなく、用途を絞った“別バリエーション”です。暗号化や動画などを使えない代わりに、長期保存に強い――という棲み分けだと考えると分かりやすいです。

適合レベルとバージョン(A-1/A-2/A-3/A-4)

PDF/Aには、規格が改訂されるたびに増えた「バージョン(パート)」と、保証の度合いを表す「適合レベル(a/b/u)」があります。たとえば「PDF/A-1b」は、パート1の中の b レベル、という意味です。まずは全体像を表で押さえましょう。

バージョン

規格・公開年(ベースPDF)

特徴・適合レベル

PDF/A-1

ISO 19005-1(2005年・PDF 1.4)

基礎となるバージョン。1a=タグ付きで文書構造・テキスト抽出まで保証/1b=見た目(再現性)の保証のみ。

PDF/A-2

ISO 19005-2(2011年・PDF 1.7)

JPEG2000・透明効果・レイヤーなどに対応。a/b に加え、全テキストにUnicodeマッピングを持つ u レベルが追加(u は A-2 以降)。

PDF/A-3

ISO 19005-3(2012年)

A-2に加え、任意の種類のファイルを添付できるのが最大の違い。電子請求書(元データを同梱する用途)などの基盤になっています。

PDF/A-4

ISO 19005-4(2020年・PDF 2.0)

PDF 2.0をベースに近代化。a/b/u というレター表記は廃止された(代わりに、ファイル添付に対応する PDF/A-4f、3D・技術文書向けの PDF/A-4e という派生がある)。

適合レベルの違いを、もう少しかみ砕くと次のとおりです。

  • b(basic): 見た目の再現性だけを保証。スキャン画像中心の文書でも満たしやすい、もっとも基本的なレベルです。

  • a(accessible): 見た目に加え、タグ付きで文書構造を持ち、テキスト抽出や読み上げ(アクセシビリティ)まで保証する、もっとも要件の厳しいレベルです。

  • u(unicode): すべてのテキストにUnicodeマッピングがあり、確実に文字として取り出せることを保証します(A-2 以降で追加されたレベル)。

ポイント

迷ったら「指定された種類に合わせる」のが基本です。提出先・登録先が「PDF/A-1b」のように具体的に指定していれば、それに合わせて書き出します。特に指定がなく長期保存が目的なら、広く使われる PDF/A-1b や PDF/A-2b が無難な選択になりやすいです。

各パートの規格は、たとえば最初のパートが ISO 19005-1(ISO公式)として公開されています。各パートの公開年や適合レベルの対応は、PDF/Aの一覧(Wikipedia)でもクロスチェックできます。

電子帳簿保存法・実務での扱い(PDF/Aは“義務”ではない)

経理や法務の現場では、電子帳簿保存法(電帳法)との関係でPDF/Aが話題になることがあります。ここはよく誤解されるところなので、正確に押さえておきましょう。

メモ

電子帳簿保存法は、“PDF/A形式”での保存を法的に義務づけてはいません。電帳法が定めているのは、改ざん防止(真実性)・検索性・見読可能性(ディスプレイや書面で速やかに確認できること)といった要件であり、特定のファイル形式として「PDF/Aで保存せよ」と求めているわけではありません。PDF/Aは、これらの要件を長期にわたって満たしやすい“適合的な選択肢・ベストプラクティス”として語られるものであって、義務ではない、という整理になります。

電子帳簿保存法そのものの条文は e-Gov法令検索(電子帳簿保存法)で、制度の解釈・取扱いの考え方は 国税庁の電子帳簿保存法関係ページで確認できます。実際の運用は要件や状況によって変わるため、提出先・保存先の指定や、必要に応じて専門家の助言に従ってください。

まとめると、「PDF/Aだから法的に安全」「PDF/Aでないと違法」というものではありません。長期保存に向いた“良い習慣”として、また提出先が形式を指定している場合の手段として、PDF/Aを捉えるのが正確です。

PDF/Aの作り方・本当にPDF/Aか確認する方法

では、実際にPDF/Aはどう作ればよいのでしょうか。普段使っているソフトの「書き出し設定」で対応できることが多く、特別な有料ツールが必ず要るわけではありません。代表的な方法を紹介します。

1. Microsoft Office で書き出す(無料で使える経路)

Word・Excel・PowerPoint には、PDF/Aで書き出す機能が標準で備わっています。「名前を付けて保存」または「エクスポート」でファイルの種類を PDF にし、「オプション」を開いて「ISO 19005-1 準拠 (PDF/A)」にチェックしてから保存すると、PDF/A準拠のPDFが作られます。すでにOfficeをお使いなら、追加費用なしでPDF/Aを用意できる現実的な方法です。手順はMicrosoftの公式ヘルプ 「Office デスクトップ アプリで PDF または XPS として保存/変換する」で確認できます。

メモ

Macの場合は注意が必要です。macOSの標準アプリ(プレビューや印刷ダイアログの「PDFとして保存」)には、PDF/Aで書き出す機能がありません。また、Mac版のWord・Excel・PowerPointは、書き出し時の選択肢が「印刷に最適」「電子的な配布とアクセシビリティに最適」の2つで、Windows版のような「ISO 19005-1 準拠 (PDF/A)」のチェック項目が表示されないことがあります。Macで確実にPDF/Aを用意したいときは、Adobe Acrobatや専用ツールを使う、あるいは可能であればWindows版のOfficeで書き出すのが現実的です。いずれの場合も、最後に veraPDF で適合を確認すると安心です。

2. Adobe Acrobat で保存・変換する

Adobe Acrobat(Pro)では、既存のPDFを「長期保管用PDF(PDF/A)で保存」する機能や、PDF/A形式へ変換する機能が用意されています。手元の通常PDFをPDF/Aに変換したい場合の定番です(こちらは有料の製品が必要です)。

3. 本当にPDF/Aか検証する(veraPDF)

「PDF/Aで保存したつもり」でも、フォント未埋め込みなどの理由で要件を満たしていないことがあります。本当にPDF/Aに適合しているかを厳密に確認したいときは、オープンソースの検証ツール veraPDF が役立ちます。PDF/Aの公式に準拠した検証(Validation)を行えるツールで、どのルールに適合・違反しているかをレポートしてくれます。提出前の最終チェックに向いています。

4. 「手元の普通のPDFを無料でPDF/Aにしたい」ときは

「元のWordファイルはもう手元になく、すでにあるPDFを無料でPDF/Aにしたい」――これが一番多いニーズかもしれません。無料の選択肢はいくつかあります。ひとつは、オープンソースのPDF処理エンジン Ghostscript です。コマンドラインで -dPDFA オプションと PDF/A 定義ファイル(PDFA_def.ps)を指定すると、手元で(自分のPC内で完結する形で)既存PDFをPDF/Aへ変換できます。無料ですが、コマンド操作やICCカラープロファイルの指定が必要で、やや技術的です。もうひとつは、ブラウザで使える無料のオンライン変換ツールですが、こちらには注意点があります。

注意

既存PDFの自動変換は「適合」を保証しません。GhostscriptやオンラインツールでPDF/Aに変換しても、元のフォントが埋め込めない・色(カラースペース)の指定が要件に合わないなどの理由で、できあがったファイルがPDF/Aに適合しないことが実際によくあります(Ghostscript出力が veraPDF の検証に通らない事例も知られています)。変換しただけで安心せず、必ず veraPDF で適合を確認してください。さらに、オンライン変換ツールはファイルをサーバーにアップロードして処理するものが多く、契約書や個人情報を含む文書では情報漏えいの懸念があります(本サイトがほとんどのツールを送信なしのブラウザ内処理にこだわっているのも、この点を重視しているためです)。機密文書を不特定のオンラインサービスにアップロードするのは避けるのが無難です。

ポイント

結論: 最も確実な無料ルートは「元ファイルから書き出し直す」ことです。可能であれば、PDFのもとになったWord・Excelなどから、前述の「ISO 19005-1 準拠 (PDF/A)」オプションで書き出し直すのが、無料かつ最も確実です。元ファイルがなく既存PDFを変換するしかない場合は、機密性が低ければGhostscript等のローカルツールで変換し veraPDF で検証、手早く済ませたいなら有料のAcrobat、と用途に応じて選ぶとよいでしょう。

Origami PDFで仕上げに使える:メタデータの確認

PDF/Aへの変換そのものは外部ソフトの役割ですが、その仕上げ(メタデータの確認)は、Origami PDF のツールが無料・ブラウザ完結(ファイルは送信されません)でお手伝いできます。

タイトルなどメタデータを確認・整える

PDF/Aは、文書のタイトルなどメタデータが適切に入っていることが求められる場面があります(空欄や不整合があると、検証で指摘されることもあります)。作成後に「タイトルが空のままでないか」「意図した値になっているか」を確認・調整したいときは、PDFのメタデータ編集で現在の値を確認し、タイトルや作成者などを整えられます。

注意

メタデータを編集しても、それだけでPDF/Aになるわけではありません。メタデータの確認・調整はあくまで“仕上げの作業”です。PDF/Aとしての適合(フォント埋め込み等)は、PDF/A対応ソフトでの書き出しと、veraPDF での検証で担保してください。

PDFメタデータ編集ツールの画面

無料・登録不要のPDFメタデータ編集ツール

タイトル・作成者などの文書プロパティを確認して書き換えます。

メタデータそのものについて詳しく知りたい場合は、PDFのメタデータとはもあわせてご覧ください。

PDF/AとPDF/Xの違い(保存用と印刷用)

PDFには、用途別に作られた「派生規格」がいくつかあります。よく混同されるのが、長期保存用の PDF/A と、印刷・入稿用の PDF/X です。

  • PDF/A(保存用): 将来も同じ見た目で開けることを重視。フォント埋め込み必須・暗号化禁止などで自己完結させ、アーカイブに適した形にします。

  • PDF/X(印刷用): 商業印刷で意図どおりに刷れることを重視。色(CMYK・特色)やフォント、塗り足しなどを印刷向けに正しく整える規格です。

ざっくり言えば、「長く残す」ならPDF/A、「きれいに印刷する」ならPDF/Xです。印刷用のPDF/XについてはPDF/Xの解説記事で、PDFの規格全体の地図はPDFの規格まとめで詳しく解説しています。

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まとめ

PDF/Aは、長期保存・アーカイブのためのPDFの国際規格(ISO 19005)です。フォント埋め込み必須・暗号化禁止・外部参照禁止といった「自己完結」のルールで、将来も同じ見た目で開けることを目指します。バージョン(A-1〜A-4)と適合レベル(a/b/u)で要件が異なり、u は A-2 以降、ファイル添付は A-3 から、A-4 は PDF 2.0 ベースという整理を押さえておきましょう。

  • 電子帳簿保存法は“PDF/A形式”を義務づけていない。長期保存に適合的な“ベストプラクティス”として捉えるのが正確。

  • 作り方は無料ならMicrosoft Officeの「ISO 19005-1 準拠 (PDF/A)」チェック、変換ならAdobe Acrobat。本当にPDF/Aかは veraPDF で検証する。

  • PDF/Aの作成・変換は対応ソフトに任せつつ、Origami PDF は作成後のメタデータ確認などの仕上げを手伝える。

PDF/Aの作成・変換そのものは外部ソフトに任せつつ、作成後にメタデータ編集でタイトルなどを整える――この仕上げは、Origami PDF が無料・ブラウザ内で完結(ファイルは送信されません)でお手伝いします。

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